

大会長挨拶

第45回日本小児遺伝学会学術集会
大会長 川目 裕
(東京慈恵会医科大学附属病院 遺伝診療部)
第45回日本小児遺伝学会学術集会の開催にあたり一言ご挨拶申し上げます。東京慈恵会医科大学附属病院遺伝診療部の川目裕と申します。
今回の学術集会のテーマは、「小児遺伝医療と遺伝カウンセリング:多様なナラティブと再生に寄り添う “Genomic Medicine and Genetic Counseling in Pediatrics: Advocacy of Different Narratives and Adaptation” 」としました。
近年、遺伝情報を利用した医療・保健が実際の臨床の場面でも次々と導入されています。先天異常症候群のみではなく、遺伝性の血液腫瘍疾患、神経筋疾患では、遺伝情報を利用した治療法の選択のための遺伝子解析等が臨床で実装されています。昨年には、先天異常症の診断のための網羅的な遺伝学的検査のひとつであるマイクロアレイ染色体検査が保険適用になりました。これらの遺伝学的検査の前後には、検査結果ごとのanticipatory guidanceを含む遺伝カウンセリングの重要性が、益々高まっています。
よって、今回のテーマとして、「遺伝カウンセリング」を主題におきました。遺伝カウンセリングは、個々のクライエントに合わせた情報提供と心理社会的援助がカップリングされた、大変にユニークな医療行為です。遺伝カウンセリングは、“Why did this happen?” (どうして? )に対応することといわれます。この質問は、多くの場合、文字通りの説明を求められているだけでなく、質問の後ろにあるナラティブ(物語)への想像、理解や共感が必要となります。この遺伝カウンセリングを通じての子どもへのadvocate、家族への適応への援助を幅広く討論できればと思います。
特別講演、教育講演、シンポジウム、優秀演題セッション、また、会場開催により論文セミナー、男女共同参画企画シンポジウム、そして例年のようにDysmorphologyの夕べを企画しています。これから本ホームページに、学術集会の情報を順次掲載していく予定です。
なお、今回は、会場開催を予定しております。新型コロナウイルス感染症は、なかなか予測の出来ない状況ですので注意深く準備を進めていきますが、東京へお越しいただき、久しぶりに顔をあわせて盛んな討論、交歓ができればと思います。多数のご参加をいただきますよう心からお待ちしております。
最後になりますが、この文章を書いている最中、ウクライナでは、連日のように戦火に子どもたちが巻き込まれ小さな命が失われ、また母子医療施設が攻撃されるという、あってはいけない状況が報じられております。また、別れて国外へ逃げ延びる家族も増え続けているようです。どうか武力行使がおさまることを祈ってやみません。
2022年4月